兜家旅館(檜原村)訪問レポート|築250年・兜造り茅葺きの宿と山菜料理

兜家旅館の外観。兜造りの茅葺き屋根と看板 ホテル

東京都で「村」と名の付く自治体は、島しょ部を除くと檜原村(ひのはらむら)ただひとつです。その檜原村のいちばん奥、数馬(かずま)の集落に、茅葺き屋根の宿兜家旅館(かぶとやりょかん)があります。

新宿から電車とバスで2時間半ほど。東京都内とは思えない山の深さと、築250年と伝わる兜造りの建物が同時に味わえる場所です。この記事では、実際に訪れたときの写真をもとに、建物の特徴・料理・眺め・料金・アクセス・注意点を整理します。

兜家旅館の外観。兜造りの茅葺き屋根と看板
兜家旅館の外観。左手が本館、右手前に「兜家旅館」の看板が立つ

兜家旅館の基本情報

項目内容
所在地東京都西多摩郡檜原村数馬2612
電話042-598-6136
建物兜式入母屋造り(富士系合掌造り)・木造4階建て。歴史400年、築250年と案内
チェックイン/アウト15:00/10:00
客室囲炉裏付き・浴室付きなど計15室ほか、30帖の大広間2室
浴室男女別の大浴室2室(+浴室付き客室2室)
駐車場50台
定休日毎週木曜(シーズン期間・祝日を除く)
予約2名から。宿泊は3か月前の同日より受付

※公式サイトの掲載内容(2026年8月30日確認)に基づきます。料金・時間は変更されるため、予約前に必ず公式サイトでご確認ください。

兜造り=「富士系合掌造り」という建築

兜家旅館の建物は、屋根の形が兜に似ていることからカブト造りと呼ばれる形式で、正式には富士系合掌造りといいます。白川郷の合掌造りとは系統が異なり、富士火山帯を中心に分布し、特に山梨県に多く残っています。江戸期に数馬と甲斐を結ぶ山道を通じた交易・文化交流があったことが背景にあると説明されています。

公式サイトによる建物の特徴は次のとおりです。

  • 内部は4層に仕切られ、1階・2階が居室、3階・4階は板の間
  • 板の間では戦後まで養蚕が行われ、繁忙期には仕切りを増やして実質7層に使ったこともある
  • 釘をほとんど使わず、木と木を組み合わせる構造
  • 茅葺き屋根の厚さは薄い所で60cm、厚い所で120cm。夏涼しく冬暖かい
  • 戦前は数馬のほとんどが合掌造りだったが、現在完全な形で残るのは4軒のみ

茅の入手難と葺き替え費用の高さで数が減った、というのはどの茅葺き集落にも共通する話です。「4軒しか残っていないうちの1軒に泊まれる」という点が、この宿のいちばん分かりやすい価値だと思います。

館内|囲炉裏と黒光りする梁

兜家旅館 本館の玄関まわりと囲炉裏のある座敷
本館の玄関まわり。奥に囲炉裏を切った座敷が続く

玄関を入ると、太い梁と黒く艶の出た柱が目に入ります。奥には囲炉裏を切った座敷。館内には囲炉裏の談話室もあり、囲炉裏付きの客室は新館側にまとまっています。

なお囲炉裏の炭は、炭を使う料理のときだけ入る運用です。「囲炉裏付きの部屋=いつでも火が入っている」わけではないので、炭火を目当てにするなら料理コースの選択が重要になります。

兜家旅館の和室。掛け軸と座卓
掛け軸を掛けた和室。天井の梁がそのまま見える

和室は純和風で、装飾は最小限。天井の梁を見せた造りで、山の宿らしい落ち着きがあります。設備面では、口コミを見るかぎり床暖房やWi-Fiは整備されている一方、大浴場は決して広くないという声が複数あります。規模を期待するタイプの宿ではありません。

渓谷と山並みの眺め

兜家旅館から見下ろす渓谷と杉林
建物脇の渓谷。杉林の底に沢が流れる

宿は谷に張り出すように建っており、窓や外廊下から真下の渓流と杉林が見下ろせます。沢音が常に聞こえる環境で、夏でも空気がひんやりしています。公式サイトも、気温は都心より6度近く低く、夏でも明け方は寒さを感じるほどと書いています。

兜家旅館から望む檜原村の山並みと杉林
山並みと杉林。奥多摩の山が幾重にも重なる

視界に人工物がほとんど入りません。「東京都内」であることを完全に忘れる眺めで、ここが最大の魅力だと感じました。敷地内には渓谷を望むカフェや、宿泊者向けの焚き火ラウンジもあります。

料理|山菜料理を軸に、猪鍋・炭火・ジビエ

兜家旅館の山菜料理。小鉢が並ぶ膳
山菜料理の膳。小鉢に山菜、刺身コンニャク、豆腐、煮物が並ぶ

料理の軸は季節の山菜料理です。写真のとおり、山菜の小鉢がいくつも並び、そこに刺身コンニャク、豆腐、煮物、香の物が加わる構成。派手さはありませんが、山の宿らしい滋味のある内容です。

公式サイトの山菜料理コースの構成は、季節の山菜・煮物・刺身コンニャク・とうふ・わさび漬・やまめの塩焼・香の物・とろろ御飯。上位コースになるとやまめのお造り山菜の天ぷらが付きます。

これに加えて、囲炉裏の個室では猪鍋料理(自家製味噌仕立て)や炭火料理(やまめ・牛肉・鶏肉・野菜、または猪肉・鹿肉・野菜)が選べます。本館側のプランでは、山菜料理に鹿肉のしゃぶしゃぶ(+2,800円)猪鍋(+4,000円)を追加する形です。

追加料理(一品)

料理料金
猪鍋4,000円
きのこ鍋2,800円
馬刺1,400円
やまめの洗い1,400円
やまめの背越し1,400円
山菜の天ぷら1,400円

いずれも予約時に注文する方式です。飲み物は秋川の地酒「喜正」ほか日本各地の日本酒、キリンの「ブラウマイスター」樽詰生などが用意されています。

さらに、宿泊者が15名以上になると本館玄関で餅つきが行われ、すいとんと餅が食べ放題になるという特色もあります(人数条件つき)。

宿泊料金と客室タイプ

2025年4月1日改定の公式料金です(1泊2食付・1名あたり・大人)。

タイプ棟/特徴平日休前日・シーズン
DX新館・浴室付+囲炉裏付38,200円41,200円
SD新館・浴室付28,700円31,700円
A新館・囲炉裏付(猪鍋または炭火コース)28,100円30,600円
B新館・囲炉裏付(山菜料理コース)22,600円25,100円
C本館・客室(大広間で食事)20,000円21,500円
D本館・襖で仕切られた客室18,000円19,000円
  • 新館の客室は全室が囲炉裏付きの二間続き
  • 囲炉裏付き・浴室付き客室(DX・SD・A・B)は小学生以上のみ利用可
  • 年末年始(12/29〜1/5)はシーズン料金に1名あたり2,000円加算
  • シーズン期間は 12/29〜1/5、4/29〜5/5、8/1〜8/31、10/23〜11/23
  • キャンセル料は8日前まで無料、7日前〜前々日30%、前日70%、当日100%

※2026年8月30日時点で公式サイトに掲載されている料金です。改定される可能性があるため、予約時に最新の料金をご確認ください。

日帰りでも利用できる(完全予約制)

宿泊せずにランチ・ディナーだけ利用することもできます。ただし完全予約制で、木曜定休です。

コース場所料金
山菜料理新館広間蘭 4,000円/桐 5,400円/菊 6,800円
山菜料理のコース本館個室6,000円/7,400円/8,800円
猪鍋料理のコース囲炉裏の個室9,500円/10,900円/12,300円
炭火料理のコース囲炉裏の個室9,500円/10,900円/12,300円

営業時間はランチ10:00〜15:00、ディナー18:00〜22:00(いずれも木曜定休)。奥多摩周遊道路や都民の森へのドライブ・登山と組み合わせる使い方に向いています。

アクセス

電車+バス

JR新宿駅 →(中央線・約35分)→ JR立川駅 →(五日市線・約30分)→ JR武蔵五日市駅 →(西東京バス「数馬」行き・約1時間10分)→ 終点「数馬」下車 → 徒歩10分

バスは武蔵五日市駅前ロータリーの1番のりばから。「数馬」行きのほか「都民の森」行きもあり、季節によって急行便も運行されます。本数が多くないので、往復ともに時刻表の事前確認は必須です。

クルマ

ルート所要時間の目安
圏央道 あきる野IC →(五日市街道・檜原街道)約50分
中央道 八王子IC →(国道411号・五日市街道・檜原街道)約60分
中央道 上野原IC →(甲武トンネル経由・檜原街道)約60分
青梅街道 → 奥多摩湖 → 奥多摩周遊道路 → 都民の森約45分(奥多摩湖から)

奥多摩周遊道路は夜間通行止めです(夏 8:00〜19:00、秋・冬 9:00〜18:00の通行可)。奥多摩湖側から向かう場合は時間帯に注意してください。

予約前に知っておきたい注意点

  • 大浴場は温泉ではありません。周辺に温泉施設があるため誤解しやすい点です。温泉目当てなら、近隣の日帰り温泉と組み合わせる前提で計画するのが無難です。
  • 浴室の規模は大きくありません。混雑する日は時間をずらす想定で。
  • 木曜定休。シーズン期間と祝日は営業しますが、それ以外の木曜は宿泊も食事も不可。
  • 予約は2名から。1名利用は受け付けていません。
  • 囲炉裏付き・浴室付き客室は小学生未満は利用不可。小さな子ども連れは本館タイプになります。
  • ランチ・ディナーは完全予約制。ドライブ途中の飛び込みでは入れません。
  • 標高が高く気温が低い。夏でも朝晩は冷えるので、季節を問わず羽織るものがあると安心。

まとめ

  • 兜家旅館は東京都檜原村・数馬にある茅葺きの宿。兜造り(富士系合掌造り)で、歴史400年・築250年と案内されている
  • 数馬で完全な合掌造りは4軒のみ。そのうちの1軒に泊まれるのが最大の価値
  • 料理は山菜料理が軸。囲炉裏の個室では猪鍋・炭火料理、本館では鹿肉しゃぶしゃぶや猪鍋を追加できる
  • 宿泊料金は1泊2食付で18,000円〜38,200円(平日・1名あたり/2025年4月改定)
  • ランチ・ディナーのみの日帰り利用も可能(完全予約制・木曜定休)
  • 大浴場は温泉ではない点と、予約は2名からである点は事前に把握しておきたい

新宿から2時間半でこの環境に行ける、というのは冷静に考えるとかなり贅沢です。都内の非日常として、一度は泊まってみる価値のある宿でした。

参考・出典

料金・客室・アクセス・建物に関する記述は、以下の公式情報を参照しました(2026年8月30日確認)。
出典:兜家旅館 公式サイト
元記事URL:https://www.kabutoya.net/mobile/japanese/item5.html(ご宿泊・料金)

出典:兜家旅館 公式サイト「合掌造りの建物」
元記事URL:https://www.kabutoya.net/mobile/japanese/item3.html

出典:兜家旅館 公式サイト「ランチ・ディナー」「アクセス」
元記事URL:https://www.kabutoya.net/mobile/japanese/item6.html

出典:檜原村観光協会「兜家旅館」
元記事URL:https://hinohara-kankou.jp/spot/kabutoyaryokan/

写真はすべて筆者が現地で撮影したものです。料金・営業時間・バス時刻は変わりやすいため、訪問前に必ず公式情報でご確認ください。

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